「現在QuickBooksを使っているが、会社の成長に合わせてERPへ移行した方がよいのか?」
アメリカの日系企業から、このようなご相談をいただくことがあります。
QuickBooksとMicrosoft Dynamics 365 Business Central(以下、Business Central)は、どちらも会計を中心とした業務管理に利用できますが、想定している企業規模やカバーする業務範囲が異なります。
QuickBooksは比較的シンプルに導入できる会計ソフトウェアである一方、Business Centralは会計だけでなく、販売・購買・在庫・製造などを一つのシステムで管理できるERP(Enterprise Resource Planning)です。
本記事では、アメリカの日系企業の視点からBusiness CentralとQuickBooks Onlineを機能・コスト・導入のしやすさから比較し、どのようなタイミングでERPへの移行を検討すべきかを解説します。
Business CentralとQuickBooksの基本的な違い

Business CentralとQuickBooksの基本的な違いは、QuickBooksが「会計を中心としたシステム」であるのに対し、Business Centralは「会社全体の業務を管理するERP」であることです。
Business Centralとは
Microsoft Dynamics 365 Business Centralは、中小・中堅企業向けのERPです。
財務会計に加え、販売、購買、在庫、プロジェクト、サービスなど、企業の主要な業務プロセスを一つのシステムで管理できます。Premiumライセンスでは製造管理やサービス管理の機能も利用可能です。
また、Microsoft製品であるため、ExcelやOutlook、Teams、Power BI、Power Automate、Power Appsなど、Microsoft 365やPower Platformと連携できる点も特徴です。Power Platformを利用すれば、Business Centralのデータを活用したワークフローや独自アプリケーションも構築できます。
QuickBooksとは
QuickBooks Onlineは、米国の金融・会計ソフトウェア企業であるIntuitが提供するクラウド型の会計ソフトウェアです。
請求書、入出金、経費、銀行口座との連携、財務レポートなど、中小企業が日常的な会計業務を行うための機能があります。
PlusやAdvancedプランでは在庫数量や原価の追跡、発注状況、在庫不足の通知なども利用できます。
会社設立時や比較的小規模な組織ではQuickBooksで十分でも、取引量や在庫、拠点、社員数などが増えるにつれて、ERPが必要になる場合があります。
機能面の比較:会計・在庫・カスタマイズ性
会計
日常的な会計処理であれば、QuickBooksは非常に使いやすいです。
一方、Business Centralは会計データが販売・購買・在庫などの業務データと直接連動します。
例えば、Business Centralでは販売出荷や購買入荷、在庫移動などの処理から会計仕訳まで一連の流れとして管理できます。そのため、会計システムと販売・在庫システムを別々に管理する必要がありません。
在庫・SCM
QuickBooks OnlineでもPlusまたはAdvancedプランを使えば、基本的な在庫管理が可能です。
しかし、複数倉庫、複雑な購買・販売プロセス、製造、倉庫業務、製品のロット管理などが必要な場合には、ERPであるBusiness Centralが適しています。
特に卸売業や製造業では、受注から発注、入荷、在庫、出荷、請求、会計までを同じデータベース上で管理できる点がメリットです。
カスタマイズ・自動化
Business CentralはMicrosoft Power Platformと連携可能です。
例えば、Power Automateで承認フローを構築したり、Power Appsで独自の入力画面を作成したり、Power BIでBusiness Centralのデータを可視化したりすることができます。
さらに、Business Central独自の開発言語ALを使った追加開発も可能です。
業務をシステムに合わせるだけでなく、企業独自のプロセスに合わせて拡張できる点がERPとしてのBusiness Centralの強みです。
コスト比較:ライセンス体系とTCO

単純な月額利用料だけを比較すると、QuickBooksの方が低コストです。
米国向けQuickBooks Onlineの通常価格は、Simple Startが月額$38、Essentialsが$85、Plusが$140、Advancedが$340です(2026年8月時点)。プランごとに利用できるユーザー数や機能が異なります。
Business Centralは、Essentialsが1ユーザー月額$80、製造・サービス管理を含むPremiumが$110、限定的な操作を行うTeam Membersが$8です。
ただし、ERPを比較する際にはライセンス費用だけでなくTCO(Total Cost of Ownership:システムの導入から運用・保守、追加開発、教育、手作業にかかる時間などを含めた総費用)の考慮が重要です。
QuickBooksとは別に在庫管理、受発注管理、承認、レポートなど複数のシステムやExcelを使用している場合、それらのライセンス費用や連携・手作業のコストも含めた比較が必要です。
※価格は2026年8月19日時点の情報です。最新の価格・プラン内容は各社の公式サイトをご確認ください。
QuickBooks公式サイト:https://quickbooks.intuit.com/
Microsoft Dynamics 365 Business Central公式サイト:https://www.microsoft.com/en-us/dynamics-365/products/business-central
導入のしやすさ・既存システムとの連携
QuickBooksは導入しやすく、比較的小規模な企業で、会計管理が目的であれば、短期間で利用を開始できます。
ERPであるBusiness Centralは、導入前に勘定科目や取引先、商品、在庫、業務フロー、権限などを整理し、必要に応じてデータ移行や追加開発をします。その分、QuickBooksより導入に時間がかかります。
一方、一度Business Centralを導入し、ERPとして業務基盤を構築すると、複数システムへの二重入力やExcelによる補完作業を減らせる可能性があります。
特にすでにMicrosoft 365を利用している企業では、Business CentralとPower Platform、Power BIなどを同じMicrosoftエコシステムの中で活用できる点もメリットです。
Business CentralとQuickBooks、どちらを選ぶべきか

QuickBooksが向いている企業
QuickBooksは、例えば以下のような企業におすすめです。
- 小規模な企業
- 主に会計・請求・経費管理を行いたい
- 複雑な在庫管理を必要としない
- できるだけ早く、低コストでシステムを導入したい
業務がシンプルなうちは、必ずしもERPを導入する必要はありません。
Business Centralが向いている企業
一方、以下のような状況ではBusiness Central導入の検討がおすすめです。
- QuickBooksとは別に在庫管理や販売管理システムを使用している
- Excelによる管理が増えている
- 同じ情報を複数システムへ入力している
- 複数拠点・複数部門の情報を一元管理したい
- 卸売・製造など在庫管理が重要である
- 倉庫業務や製品のロット単位での管理が必要である
- 承認ワークフローをシステム化したい
- Power BIなどを活用して経営情報を可視化したい
- 今後の会社規模拡大を見据えてシステム基盤を整えたい
特に「QuickBooksで会計は問題ないが、それ以外の業務をExcelや別システムで補うことが増えてきた」という状態は、ERP移行を検討する一つのタイミングです。
JBS USAによるBusiness Central導入支援

Business CentralとQuickBooksのどちらが適しているかは、単純に会社の売上規模や社員数だけでは判断できません。
取引量、在庫管理の複雑さ、拠点数、既存システム、Microsoft 365の利用状況、今後の事業計画などから、総合的に判断する必要があります。
JBS USAでは、在米日系企業のお客様を中心に、Business Centralの導入から移行・追加開発・Power BI連携・運用サポートまで支援しています。
現在QuickBooksを利用しており、
「ERPへ移行するべきタイミングなのか分からない」
「Business Centralへ移行すると何が変わるのか知りたい」
という段階からでも、ぜひご相談ください。
実際にBusiness Central(ERP)で業務効率化を実現されたお客様の声は、以下でご覧いただけます。

まとめ
QuickBooksとBusiness Centralは競合する部分もある一方、想定している業務範囲が異なります。
シンプルな会計管理をしたいならQuickBooks、会計・販売・購買・在庫など会社全体の業務を一元管理したいならBusiness Centralというのが、基本的な判断基準です。
QuickBooksを問題なく利用できている企業が無理にERPへ移行する必要はありません。
一方、会社の成長とともにExcelや周辺システムが増え、情報の二重入力や集計作業が煩雑になってきた場合には、Business Centralへの移行を検討するタイミングかもしれません。
Business Centralへの移行をご検討の場合は、年間約600件のIT関連案件に対応するJBS USAにご相談ください。初回相談を無料で承ります。
よくある質問(FAQ)
Q1. Business CentralとQuickBooksの基本的な違いは何ですか?
Business CentralとQuickBooksの基本的な違いは、QuickBooksは会計を中心としたソフトウェアで、Business Centralは会計・販売・購買・在庫など企業全体の業務を統合管理するERPです。
Q2. Business CentralとQuickBooksはどちらが安いですか?
ライセンス費用と初期導入費用だけで比較すると、一般的にはQuickBooksの方が低コストです。ただし、複数の周辺システムやExcel作業を含めたTCOでは、Business Central導入による業務統合の効果も含めて比較する必要があります。
Q3. 製造業・卸売業にはどちらが向いていますか?
小規模でシンプルな在庫管理であればQuickBooksでも対応可能ですが、複数の業務プロセスを連携させる必要がある卸売業や、製造管理が必要な製造業、倉庫業務や製品のロット単位での管理が必要な場合には、Business Centralがおすすめです。Business Central Premiumには製造管理機能も含まれています。
Q4. JBS USAはBusiness Centralへの移行を推奨しますか?
すべての企業にBusiness Centralが必要とは限りません。現在のQuickBooksで必要な業務を効率的に管理できている場合は、そのままの利用も合理的です。JBS USAでは、現在の業務や課題、将来の事業計画を確認した上で、ERPへの移行が必要かどうかを含めてご提案します。

【筆者情報】
龍田 雅也 Masaya Tatsuta(President / CEO)
総合商社、経営コンサルティングファームでの経験を経てJBS USAに入社。ITインフラ、システム開発、ERPコンサルティング分野において幅広いプロジェクトをリードし、2026年10月にJBS USAの代表取締役社長に就任。米国市場における企業のDX推進と業務改革を支援している。
